信濃毎日新聞創刊150周年!

地域に根差し 良質な情報これからも

【創刊150周年を迎えて】

 信濃毎日新聞社社長 小坂壮太郎

信濃毎日新聞は7月5日、創刊150周年を迎えます。1873(明治6)年、「長野新報」の名で創刊された第1号は、二つ折りの半紙をとじ込んだ小冊子でした。そこから数えた通算発行号数(紙齢)は5日付で5万633号となります。現存する一般日刊紙では3番目の古さです。この長い歴史を紡ぐためには、何よりもその時々の読者の存在が欠かせません。現在約40万の読者の皆さまに心から御礼を申し上げます。

私たちは、信州で暮らすのに不可欠な情報インフラとなるべく、努力を重ねてきました。その基盤となるのは、社是の一節にもある「郷土に立脚」という精神です。いかなるニュースも長野県の視点で捉え直してお伝えし、世界や国内の出来事を身近に感じられる紙面作りを心がけてきました。例えば、ロシアとウクライナの戦争に関しても、県内のさまざまな物資の価格にどんな影響をもたらすか、あるいは戦地から県内に避難した人々が何を語ったのかなど、信州との関連に着目した記事を掲載してきました。

全国的な話題であっても、その登場人物が県出身であったり、信州に縁のある人物であったりする場合、必ずそのことを書き添えます。大相撲であれば、どの力士が活躍しようとも、郷土出身の御嶽海関の動向が大きく載っています。

こうした郷土色にあふれた紙面を毎朝、読者の手元にお届けする県内150の販売店も、各店独自のミニコミ紙発行やイベント開催などを通じ読者との交流を心がけ、それぞれの地域に深く根を下ろしています。

一方、紙面作りの基本的姿勢として、あらゆる権力から独立し、何者かに忖度(そんたく)することなく、できる限り公正中立な記事をお届けすることに努めます。その結果として、憲法に規定される基本的人権を守る、そして平和主義に徹する、ということに報道面から貢献したいと思っています。

長い歴史の中には、ふたをして覆い隠したいような時期もあります。第2次大戦の戦前から戦中に至る紙面です。激しい言葉を使って外国への敵意をあおったり、戦意高揚のため軍歌の歌詞を募集したりしたこともありました。こうした恥ずべき所作も、このほど刊行した社史に克明に記録してあり、「二度と繰り返すまい」という反省材料として引き継ぎます。

さて、新聞業界はいま、逆風の中にあります。人口減少に加え、インターネットの隆盛、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス、交流サイト)の充実などの影響を受け、購読者は減少を続けています。信濃毎日新聞もこの10年間で8万部余り減りました。こうした変化に対応すべく一昨年、インターネット版の新聞「信濃毎日新聞デジタル」をスタートさせ、デジタル環境においても良質な情報をお届けできるようになりました。

よく言われるように、インターネットに流れる情報は玉石混交で、真偽が怪しいニュース、偏った見解に基づく主張、他人への誹謗(ひぼう)中傷などが当たり前に目に入ります。これに対し、新聞が提供するニュースは、人権感覚などに対する訓練を受けた記者が取材し、紙面に掲載されるまでに何人もの目でチェックしたものです。新聞情報は、「安心マーク」の付いた情報である、との自負があります。

今後、情報環境にどんな変化が生じようとも、正確性、中立性が重要であることに変わりはないでしょう。私たちは、読者の皆さまに安心して頼りにしていただけるニュースを、これからもお届けします。

末永いご愛顧をお願い致します。

 

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